【感想】ルース・オゼキ「あるときの物語」

小説,ルース・オゼキ Ruth Ozeki,「あるときの物語」A Tale for the Time Being, 早川書房,田中文 訳

あるときの物語(上)
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西加奈子さんがオススメしていたので読んでみました。
(彼女の作品はまだ読んだことがない私ですが・・・。ラジオやテレビでの彼女のおしゃべりが楽しかったので)

最後の最後で、いろんな伏線がするすると回収されていき、明るさを感じさせる結びで終わって、カタルシスは感じました。
が、そこに至るまでの壮絶なイジメ描写(現在の日本の学校と戦時中の軍隊)、社会に見捨てられたような悲惨で憂鬱な生活の描写、さらにセンセーショナルな大事件(9.11や3.11)を絡めてあって、もうゲンナリいうかお腹いっぱいになってしまいました。それを吹き飛ばすような爽快感はラストで得られなかったのです。

作者の方はアメリカ人と日本人のハーフで、日本に留学・滞在経験もあるようですが、どうしても、「欧米人から見た日本」の描写としか感じられないことが多かったです。
さらに、これでもかこれでもかと不幸が振りかかる女子高生の話に関しては、一昔前に流行ったケータイ小説を思い出させました。
どうも、全体的に「薄い」気がしてならないのです。
それを補完する意味もあってか、禅や仏教の考え方やそれに基づく設定描写もかなり頻繁に出てくるのですが、こっちの心情にどうもしっくりこない。ちぐはぐな感じ。

理屈は通っているのだけれど、心にはどうも響かない。私にとっては「惜しい」と感じる小説でした。

 

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