【感想】横山秀夫「64(ロクヨン)」

小説,横山秀夫「64(ロクヨン)」, 文藝春秋

64(ロクヨン)
64(ロクヨン)

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横山 秀夫
文藝春秋
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NHKの土曜ドラマ、あの「クライマーズ・ハイ」のスタッフ再集結、そして主役は大好きなピエール瀧さんということで、一も二もなく飛びついて見たドラマ版「ロクヨン」、素晴らしすぎました。

最終話を見た直後の興奮したツイート2件がこちら。

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#ロクヨン 脚本/演出/美術/音楽etcで着実に質を高めた点で良作になるのは間違いなかったけど、役者に関しては演技達者で周りを固めつつ主役にピエール瀧という大ギャンブルをかまして見事勝ったことで、大傑作になったと思う。「巧さを越えた存在感」ってエンターテイメントには大事よね。

posted at 23:46:46

あー #ロクヨン よかった。よすぎた。瀧さんをこんなにカッコよく感じるなんて誤算w 井上Dの映像は、空気や温度がものすごくリアルにひしひしと伝わってくるのがすごい。大友さんの劇伴は怖すぎるくせに、時々異常に優しすぎて、これがまた怖い。再見したい。原作読みたい。

posted at 23:22:10

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…ということで、私にしてはかなりめずらしく、ドラマを見てから原作に手を出すということをしました。
最初から頭にイメージが入っていたので、読むスピードがかなり早かった。

ドラマではなんとなく感じるだけだった、三上の心理状態や、組織の説明が緻密に描写されているので、「なるほどそうだったのか」という発見がたくさん。
一方で、段田さん演じる雨宮の「翔子―!!」の絶叫繰り返しによる切迫感やえも言われぬ不安感。またラスト近く、ヘリウムガスの声が地声に戻ったときのモヤがパッと晴れるような感じなど、映像作品ならでは味わいがたくさんあったことも分かった。

キャラクターに関しては、先にドラマ見ちゃっているから完全にそのイメージで読むことになりました。
読み始めはちょっと違うかな?と思ったのだけど、読み進めていくにつれ、自分の顔立ちに苦しみまくる三上広報官はやっぱ瀧さんがベストだわ!と確信(笑)。
「寝業師」諏訪係長も、新井浩文くんがハマりすぎ。その他の方もみなさんそう。
松岡参事官は、柴田恭兵が演じることによって、ヒーロー度が異常に増してたんだなあ。なんだろうあの独特のキレキレ感は。

というわけで男性キャラはドラマ・小説ともに違和感なくシンクロしたのだけれど、女性キャラクターに関してはちょっと違った。小説では、男性目線の描写ということもあってか、女性キャラが神聖化されすぎている気がした。女の私からすると、三上さんの妻の美那子、広報室の美雲、ともに美しすぎて正しすぎて、少し現実離れしていた気がする。もちろんそういうキャラクターとして設定されているのは承知だとしても。

それが、ドラマ版で実際の女優さんが演じることによって、生身の女性らしさを感じられたのがよかった。
特に、木村佳乃さん演じる美那子は、序盤、精神的にかなり危うい状況から、終盤、目の前で泣き崩れるダンナをあたたかく慰めるところまでを一貫して演じきっていて、女性ならではの図太さみたいなのが出ててよかったなぁと思った。

今回は、小説単体でというよりは、ドラマを見た体験とあわせて楽しむといういつもと違うスタイルになった。両方を体験できて、本当に贅沢で楽しい時間をすごせた。

ほんと、瀧さんをキャスティングしてくれてありがとう!(笑)

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