【感想】米原万里「心臓に毛が生えている理由」

エッセイ,米原万里,「心臓に毛が生えている理由」, 角川文庫

心臓に毛が生えている理由 (角川文庫)
米原 万里
角川学芸出版 (2011-04-23)
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 どの文章も面白かったのですが、最後の、米原万里さんと池内紀さんの対談のなかで、気になる言葉があったので抜粋。

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池内「夢見る人は薄情でもありますからね(笑)」

米原「ロシア人には、自分の才能は自分だけのものではないという不思議な感覚があるんです。…(略)…チェリストのロストロポーヴィチさんの舞台を見たときのことですが…(略)…(舞台前の)彼はまったくの平常心なんです。(どうしてかと聞くと)『僕は天才だからだよ』と言うんですよ」
米原「…(略)…彼は高等音楽院時代に、自分の一〇倍練習している人が自分よりうまくならず、あまり練習していないのに自分はすごくうまく弾ける。努力して身につけた才能なら自分のものだけれど、僕の才能は神様がくれたものだから、自尊心とか上手く見せようとか、全然思わない、それが天才なんだ、というわけです。」

米原「ロシアとプラハで特派員をしたことがある新聞記者も、『ロシア人というのは底なしのお人好しだなぁ。スラブ系だから同じかと思ったけど、チェコ人は姿形は似ていてもロシア人とは全然違う人種だ』と言っていました。ただし、冷たくて計算高くてシニックな人間というのは、真に残酷なことはしないんですね。底なしのお人好しほど残酷になれる。」
池内「シニックな人間は自分自身も批判の対象にしますからね。底なしの善人が実は一番怖いんです。ルーマニアのチャウシェスクのやったことだって、ちょっと考えればいかにもばかばかしいことなのに、なぜか体制として整然となされてしまっていた。」

--ここまで--------

ロシアの、人の才能をうらやまない国民性(民族性?)というのは、まったく予想外の話で、びっくりしました。

そして、「善人が怖い」というのは、震災以後、若干ヒステリックな論調が目立つここ数年、私も感じていました。打算ではなく純粋な思いだけで発言し行動する人が、一番タチが悪いのかもしれない、と。

私自身は、「好きなことをやりたい」という単純な気持ちは強いけれど、行動は、打算がないと起こしません(笑)。損することはやりたくない。自分の得(利益)になることだけをやりたい。(利益というのはお金だけとは限らないのですが)。

気持ちだけで動ける人を羨ましく思うこともあるけれど、まぁ、私は無理せずにいようと思いました。
(あぁ、でも、恋愛では、気持ちだけで動いていた頃あったなぁ・・・昔々の話(笑))

 

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