【感想】KAKUTA「痕跡(あしあと)」

痕跡(あしあとKAKUTA、作/演出 桑原裕子、(シアタートラム)

なんとKAKUTAを見るのは5年ぶり。
女優の勉強をはじめた娘さんとその母親、そして共通の友人(といってもみんな年下だ!)にとって、KAKUTAはきっと分かりやすくて見やすい劇団だろうと思い出し、誘った行った。

いやぁよかったぁ。
私が見たKAKUTAの中では一番。お話も演出も、完成度抜群だった。
…なんて失礼よね、5年も見に行ってなかったくせに。
誘ったみんなも涙して喜んでくれていたのが嬉しかった。

過去のKAKUTAの感想を見返してみて「楽しくてキュンとなって大好きだけど、登場人物が多くて冗長なところが気になる」と言うのが私の見解だったのを思い出した。
今回の「痕跡(あしあと)」では、やはり登場人物は多いけど、冗長さを感じる隙がほとんどなくスリリングに絡み合って話が収斂していく(さすが鶴屋南北戯曲賞受賞作品!)。舞台装置は最低限、シンプルでスピーディな演出。でも印象はとても強い。

言うことな~し!てな感じですが、でも贅沢な私は思ってしまうのだ。
もっと、もっとストーリーの要素そぎ落としちゃってもよかったのでは!?なんてね。

結構早い段階で、物語のキーとなる、種明かしが分かってしまう。
そこでダレるかと思いきや、キャラクターの心情がどう落ち着くかはわからないので最後までひっぱられてしまうのは、お見事!
でも、実際は種明かしの直後をもっと短くできる手段はあったんじゃないかなぁ、なんてね。

いろんな要素がからみ合ってこその味わいがあったのは間違いない。
でも、もっと絞ったほうがより強い衝撃を味わえたんじゃないかなぁ、などと思ってしまう。勝手だと我ながら思う。

ところで、ラスト、子どもを探し続けた母親が、成長した我が子と偶然すれ違った後「ハッ」となるところで幕を閉じる。
私の個人的な好みでは、ここで「ハッ」とせずに何もわからずただすれ違ったままのほうが、なんかよかった気がするな…。
(あ、完全な単純な好みで、そうしろって話じゃないですよ)

いろいろ書いたけど、桑原裕子さん、ほんとこんな複雑な話を作って演出して、見る人をぐいぐいと引き込んでほんますごい。
女優としても大好きなので、もっとガッツリ主役で演技してるのも見てみたい。
すごく現実感がある、ウソのない感じがするんで。素敵です。応援してます。

 

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